神経に住む者たちへ―――――――――――――◆ 天野可淡
給住在神經上的…

 

……あるいはもしあなたが風にあこがれて
或許…你是對風有著憧憬,
地下から這い出るセミならば、
而從地底下爬出的蟬
最後の土をかき分けた瞬間、
在撥開最後一塊泥土的瞬間、
地上の目もくらむ光と同時に
令人昏眩的光芒刺入眼裡的同時
足もとに深く広がるやわらかな闇を
一定也對腳下深沉、寬闊而柔軟的黑闇,
あらためて認識するでしょう。
重新認識一番了吧。

 

人々はともすると光と闇のとろけあった
人們往往很容易徬徨於融光明及黑暗於一體的
乳白色の混沌の中にさまよいがちです。
乳白色混沌當中。
私もその中の一人だから常にそれを恐れ、
我也是那之中的一人、所以時常為此而恐懼  
手を動かさずにはいられないのです。
無法任手就這樣靜止不動。

 

子どもの頃、真夜中のベッドの中で、
年幼時、對位在深夜的床鋪上,
そこにある自分の肉体と、
那個自己的肉體
それをあらためて意識している
有了新的意識
目に見えぬ別の自分との接点がさがせなくて
因找不著與"看不見的別的自我"的接觸點,
悲鳴をあげたことが有ります。
而哭嚎過。
きっと前の日、
這定是前幾日,
日焼けで剥がれた皮膚や
長時間用顯微鏡觀察
花びらなどを
被烈日灼傷的皮膚
顕微鏡で永いことのぞいていたせいかもしれません。
跟花瓣的緣故也說不定。

 

もし精神というものをのぞける顕微鏡が有るとしたら、
如果有能夠窺伺一種叫做"精神"的東西的顯微鏡的話
やはり皮膚や花びらのそれと同じように
必定像是皮膚和花瓣一樣、
神に存在を約束されたものとして
作為某種與神約定的存在物
映し出されるのでしょうか。
被映照出來吧。
それが知りたくて、
我想知道、
それを確かめたくて私は私の精神に棲むものを
想確認那個…我不得不去創造―――
作らざるを得ないのです。
在我的精神上棲息的東西。
時々私の作った人形を見て、
有時看著我做的人偶,
なぜかなつかしいと言う人がいます。
不知為何總有說著"很懷念"的人
きっとその人も私と同じように、
這個人一定是因為和我一樣,
いつか遠い日に悲鳴をあげた記憶があるのでしょうか。
擁有不知何時、遙遠而哭喊過的記憶吧。

 

時おり私は無機質になりたくて
我偶而想成為無機物質―――
高速道路をバイクで走ります。
在高速公路上乘著摩托車奔馳的時候。
スピードメーターに反比例して
但與計速器成反比 ,
私は単純な記号で表されるかめの子になります。
我只會變成單純以記號表示的苯環。
そんな時は山あいに広がる夕焼の中に
當時,亦可在夕照廣被的山隘中,
神の存在を正直に認めることもできます。
正直地體認到神的存在。
そして願わくば一元素として
然後,甚至感到能化作願望的一個元素
<彼>の胸にとけ込みたいとさえ感じます。
融入<祂>的胸膛。

 

しかしそれが果たせる訳でもなく、
可是,並沒有那樣可行的道理,
しばしば白バイのおじさんに
我常從騎著警車的大叔那裡了解到,
自分が単なる猿であることを教えられます。
自己不過是隻猴子的事實。
アーティストとは成長できなかった人、
說不定字典應該把"藝術家"一詞的解釋
と辞書を書きかえるべきかもしれません。
改為"無法成長的人"才對
しかし成長できなかった人の特権として、
但是作為一個"無法成長的人"的特權
私は作品の中で自意識を分解し
我將作品中的自我意識分解開來、
新たな原子でそれを再構成することができます。
並用新的原子再次構成它。

 

<彼>が一日目に光よ闇を作り、
就像<祂>在第一天造了光明與黑闇,
二日目に天と地を作り、
第二天做成天與地
最後に私たちを作ったように、
最後創造了我們一樣、
アーティストも自らの光と闇、
藝術家也創造了屬於自己的光與闇、
自らの天と地、
天和地
そして最後に自らの神経をときめかす者たちを
最後作出了能讓自己的神經
作ることができるのです。
雀躍不已的作品。
私は願わずにいられません。
我不得不這樣祈求著、
私の作り出す者たちが、
祈求我做出來的物體們,
あのかつての闇を切り裂いた悲鳴を
能撫慰昔日
なだめる者であることを。
撕裂黑闇的悲鳴、
目に見える神経と目に見えない神経の狭間を
能填補看得見和看不見的
うめる者であることを。
神經間的空隙、
そして、あなたの神経から響く微分音を、
並祈求我可以正確地捕捉到
私が正確にとらえ受けとめることができることを、
從你神經響起的微分音
再びサイレンのストップもかかることなく………
且警笛的停止聲亦不會再一次地籠罩………

 

 人形はいいます。
 人偶說:         

 “ 私の瞳は銀色の湖
   我的眼瞳是銀色的湖水
   しばし泳がせてみませんか
   要不要常來游泳呢
   あなたの退屈な時間を
   在你無聊的時候
   そして残るのは
   然後留下的…
   悪魔の頃のあなたのぬけがら
   將是你惡魔時刻的軀殼"

 

 

 本篇文章出自2007年9月30日再版的『KATAN DOLL fantasm』

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